半田晴久/深見東州 産経連載第34回「受験は通過点」
合格後の進路見据えた大学選択を
何度か、このコラムでも書きましたが私は、生徒や親から進路相談を受けると、まず、大学進学を考えるように勧めています。理由は幾つかありますが、その一つに、大学の良さは、さまざまな人の考えを吸収しながら、人格を養成することができる点にあります。
全寮制の私学は例外として、公立高校では、その地域の生徒としか交流の機会がありません。しかし、大学には全国の高校から学生が集まってきます。国内はもとより、外国からの留学生もいます。多様な学生と触れ合い、いろいろな意見や考え方を吸収することも、大学に進学する大きな意義の一つであるといってよいでしょう。
とりわけ同じ目的の者が集まったゼミやクラブは、人間形成の上でも大切な役割を果たしています。ゼミやクラブ活動を通じて人生観や世界観、あるいは職業観や宗教観を語り合うことが、どれほど人格形成に役立つかしれません。その意味で大学進学を勧め、入学後はゼミやクラブには加入してほしい、という趣旨の話をしています。
受験生は、とかく合格することが人生の目的、終着点のような考え方を持ちがちですが、受験はあくまでも通過点。次のステップである大学生活を得るための手段に過ぎません。
ですから、ゼミやクラブにも参加せず、「帰宅部」と揶揄されているような、家と大学を往復するだけの学生生活を過ごしていたら、大学進学の意義は半減します。
受験校の絞り込みに、家族も一緒に悩んでいる時期かと推察しますが、合格後の進路も見据えた大学選択をしてほしい、と思います。
受験生に向かって・大学生活のすすめ・を書くなんて、気の早い話、と一笑されるかもしれません。しかし、受験の原点は、自分の将来を見据えた幾つかの選択肢の中から、最も理想に近い大学に的を絞ることにあります。大学で何を学び、どのような学生生活が必要かを知ることは、重要な意味があるのです。
私も学生時代、クラブの仲間たちと人生観や世界観について、時のたつのも忘れてディベートしたのを昨日のように覚えています。振り返れば、じつに稚拙な議論ではありましたが、人格形成の基礎となる・空疎な議論・は、大学生の特権なのです。それだけに、大学進学を勧めざるを得ないのです。
みすず学苑 半田晴久
2003年10月16日 産経新聞