半田晴久/深見東州 産経連載第28回「志望校選択5」
読書通じ疑似体験 方向性見いだす
あと百日もすると、入試は本番を迎える。大学受験生にとって、これからが人生を賭けた正念場だ。現役組は、予備校との掛け持ちで授業と受験勉強の両立に追われる人も多いかと思う。背水の陣で臨む浪人組は、これまで以上に厳しく孤独な戦いになる。
これからの受験対策は、予備校などが行う模擬試験を数多くこなすことを勧めたい。緊張感が張り詰めた雰囲気で、受験度胸をつける目的のほかに、異なった模擬試験を受けることで、出題の傾向がつかめる。さらには、自分の苦手科目も自覚できる。なによりも、すべての模擬試験結果を基に受験科目別平均点を出せば、実力に見合ったランクの学校がより鮮明になります。
この時期は、自分の実力を確認し、志望校選択の最終的な見極めをつけなければなりません。志望校が絞れずに、散漫な受験勉強を続けるのは、無駄な科目にもエネルギーを消耗し、効率を悪くするだけ。寸暇を惜しんで勉強しないと、時間が足りないことは、受験生は百も承知です。
ところが、人生に目標を持てない高校生も増えているようです。予備校にも、心配する親が「何とか夢や希望を持つように指導してもらいたい」と、相談に訪れます。
予備校はあくまでも入試を突破できる学力を養うところ。夢や希望を持つ、持てないのは生徒個人の問題ですが、むげに突き放すわけにもいきません。一番の原因は、夢や希望を抱かせる手本やモデルになるものが見いだせないからです。
その場合は、「まず。読書を勧めなさい」と、私は答えます。シュバイツァー博士の伝記に触れ、無医村の医師を目指し、受験勉強に励んだ人も少なくありません。読書を通じて知識や情報を吸収し、疑似感動体験を重ねていけば、志望の方向性も見いだせるし、回り道のようですが、読書は同時に活字の読解力も培い、受験勉強には一石二鳥です。
自らを切磋琢磨する受験勉強は、将来の自己形成の基盤になるとともに、家族にとってもプラスになる側面があります。志望校選択の過程では相談の機会も多く、親子、夫婦間の意思の疎通が図られ今日の社会環境ではある種、家族が精神的に結束できる数少ないチャンスと言っても過言でないようです。
みすず学苑 半田晴久
2003年9月4日 産経新聞