半田晴久/深見東州 産経新聞連載第13回「教育の実像1」
基礎学力は詰め込み主義でコツコツと
学校教育の問題点として、詰め込み主義(暗記教育)の是非が指摘されます。「詰め込み主義だから考える力が養われないのだ、暗記教育を前提に出題するから入学後に学力が伸びないんだ」というのが批判する人たちのいい分です。
私は、この批判には納得できません。理由は二点あります。第一に基礎学力をつけるには、徹底した詰め込み(暗記)が不可欠であること。入試は、高いレベルの思考力、分析力、論述力、読解力が試され、暗記だけは合格できない―現実があるからです。
基礎学力で説明すると、例えば英語。単語や熟語を暗記せずに、実力を伸ばせるのかどうか。考えてみれば語学はすべて詰め込みであって、単語や熟語、センテンスを暗記せずに読み、書き、聞き、話せる語学をモノにできるわけがありません。
英語力を身につけるうえでとくに重要なのがセンテンスの暗記で、スラスラと口が出てくるまでは覚えなければ絶対に、英会話も英作文もできません。
日本における英作文は“英借文”なのです。典型的な英文に応じて主語や述語、修飾語、時制(現在、過去、未来などを示す文法)を変えていく。これが英作文であって、英文を暗唱することで基礎ができ、空欄補充の問題が解けるようになるし、長文読解の重要構文理解もできるようになります。
英語以外にも、日本史・世界史なども暗記型の科目です。歴史の流れをつかむ教育が重要といいますが、基礎となる部分は暗記で身につけるしかありません。同様に、地理や公民・政経なども基礎となる部分は、暗記の詰め込みです。
応用が問われる数学や物理にしても、入試に出題される典型問題を反復練習することで、基本的な解き方の定石を暗記するしかないのが実情ですから、本質的には詰め込みといえます。
「幅広い、徹底した詰め込みの基礎があってこその応用や論述なのです。基礎こそ到達点」
私の考え方は、詰め込み主義でコツコツと覚えていくしかないのが基礎学力というものです。
そのかぎりで、暗記重視の詰め込み教育がよくないという批判は、的を得ていないと思うのです、皆さんはいかがお考えでしょうか。
みすず学苑 半田晴久
2003年5月22日 産経新聞