産経新聞 半田晴久(深見東州)掲載
東京大薪能 堪能 摩天楼に優美な世界出現
1999.10.02 東京夕刊
全山紅葉の錦の信州・戸隠山。美女たちの酒宴に通り合わせた平維茂(たいらのこれもち)は誘惑され、しばし酔いしれ夢心地に。ふと目を覚ますと実は...(能「紅葉狩(もみじがり)」から)。
昨年に引き続き、九月二十八日午後六時半から、東京・新宿にある東京都庁前の都民広場で、「第二回東京大薪能」(主催・世界芸術文化振興協会、後援・東京都、産経新聞社)が行われた。
日中は夏の名残を感じさせる暑さだったが、日が落ちてからは風もなく、野外能には絶好のコンディション。自動車の騒音もほとんど聞こえず、今年は昨年の倍以上の三千三百七十人の観客が集まり、摩天楼のはざまで能狂言の優美で力強い世界にひたった。
演目は、最初に世界芸術文化振興協会の深見東州会長がシテを演ずる能「岩船(いわふね)」、続いて狂言 「梟(ふくろう)」(山本東次郎、則直、則俊)、そして宝生流宗家の宝生英照のシテによる「紅葉狩」。
今年、宝生流宗家一行と米ニューヨーク、中国・杭州で演能を披露した深見東州氏は「秋らしく、なじみやすい演目を選びました。東京都の全面的な後援を受け、多くの人に来ていただきました。これからも能を見たこと のない人、若い世代に能狂言の輪を広げていきたいですね。外国でも能楽堂を建てるなど、この世界に誇れる演 劇を積極的に紹介するつもりでおります」と話していた。
能「岩船」の前シテ・唐人姿の童子(中央、深見東州)は日本の帝の臣下に宝玉を与えて消えうせる
《童子》
能「岩船」の前シテ・唐人姿の童子(中央、深見東州)は日本の帝の臣下に宝玉を与えて消えうせる
《龍神》
「岩船」の後シテ・竜神が現れ、宝を満載した船を岸に着けると「めでたき御代は千代まで」とことほぐ
《誘惑》
能「紅葉狩」の前シテ(右、宝生英照)ら美女の面々は酒宴を設け、色仕掛けで平維茂を誘惑する
《静寂》
日ごろの喧噪(けんそう)をしばし忘れ、日本の伝統芸能を楽しむ観客の周りは新宿副都心のそびえ立つ摩天楼群。なんというコントラスト!
《奮闘》
フクロウのような奇声を上げ、物の怪(け)につかれた弟(左、山本則俊)を療治しようと、兄と山伏(山本東次郎)が奮闘するが、最後には2人とも...(狂言「梟」)