半田晴久/深見東州 産経連載第46回「得意科目を伸ばす」
「誰にも負けない」自信が勉強の原動力に
受験生のお母さんからよく受ける相談に、「国語や社会は得意なのですけれど、数学の成績が悪くて困っています」「数学は良いのですが、英語がどうも…」というのがあります。無論、不得意科目はないにこしたことはありませんが、苦手な科目が一つや二つあったところで、目くじらを立てるほどのことではありません。
不得意科目を克服させたい、との親心でしょうが、親ができる対応策は塾に通わせるか、家庭教師を付けることです。その時期は、数学ならば分数計算を習う小学校の三、四年生。英語ならば中学一年の終わりころからが理想です。
親が環境を整え、子供が努力しても不得意科目が克服できない場合は、方向を転換させて、得意科目をいかに伸ばすかに心を配るべきです。秀才と呼ばれる子でも不得意科目はありますし、「誰にも負けない」という得意科目をつくることで、その自信が、勉強意欲や勉強時間全体を増やす原動力となるのです。
受験指導をしていて感じることは、際立った不得意科目はないが、得意科目もないという子の指導ほど難しいことはありません。どの科目もドングリの背比べだと、成績向上のきっかけがつかみにくいからです。不得意科目はあっても得意科目を持っている子の方が、合格の可能性を秘めており、進路決定の指導にも迷うことも少ないのです。
得意科目を伸ばすことで、いい点を取れば勉強が楽しくなる。そうなれば、ますます予習、復習に励み、先生やクラスの仲間から「すごい」と一目置かれるようになる。その結果、得意科目をやり遂げた自信が、不得意をも克服させるのです。
「短所を無くすより長所を伸ばす方が、成長が早い」は、勉強にも当てはまります。
子供の教育では、「よくできるねえ、すごいじゃないか」と励ましながら、長所を伸ばす方向に持っていった方が絶対に良い。「みんなできるのに、なぜできないの?」「苦手な数学もちゃんとやりなさい」などと、マイナス面ばかりを指摘すればするほど、子供は勉強意欲を無くしていくものです。
不得意科目をつくらせたくないと、親がやきもきしたところで、子供が才能を開花できなければ問題は解決しません。時には「急がば回れ」の心境も必要です。
みすず学苑 半田晴久
2004年1月15日 産経新聞