半田晴久/深見東州 産経連載第26回「志望校選択3」

書物から進路のヒントが見いだせる

 夏休みも終盤を迎え、受験生に、あせりの色も見え始めます。特に、浪人生には、断崖絶壁に立たされたような、実に孤独な気持ちになる時期といえるでしょう。

 

 九月になっても、毎日通学の義務もない代わりに、この豊富な時間の活用の仕方如何で、その後の人生にも大きな違いが生じてきます。最悪のケースとしては、「小人閑居して不善をなす」で、遊びに走り、受験のみならず人生を台無しにすることにもなります。予備校の存在意義は、規則正しい生活と勉強のリズムを調え、勉強できる環境と毎日勉強する動機づけを与えることも一つなのです。

 

 では、浪人生はどのように過ごすべきなのか。

 

 できれば、毎日十時間は勉強に割く。「とても無理だ」と、弱音を吐く前に、時間の割り振りを考えれば、難しいことでも何でもありません。予備校で六時間、家で三時間、通学途中で一時間暗記物をやれば十時間です。

 

 私の予備校では、何回か休憩を挟み、十二時間ぶっ続けで授業をするトレーニングをやっています。最初は誰もが疲れ果てた表情をみせますが、そのうち体が慣れ、涼しい顔で机に向かっています。たとえば、一流大学の医学部を志望している人は、それぐらいやらないと、合格はおぼつきません。

 

 勉強漬けと嘆くか、現役高校生に比べ、それでも時間に余裕があるのです。睡眠時間などを除いた五、六時間をいかに使うか。私は、読書を勧めています。勉強に行き詰まって能力に限界を感じたとき、将来への疑問がわいたときに、書物から学ぶことが多々あるからです。

 

 目の前の志望校選択で悩んだときにも、書物に込められた著者の思想や人生観によって選択幅が広がり、意外な進路を見いだせる場合も少なくありません。

 

 受験の最初の勝負どころは、この時期に志望校を明確に絞り込むことに尽きます。読書を通じてヒントをつかみ、将来の進むべき道が決まれば、迷っている志望校も自ずと絞られるものです。

 

 何よりも書物の面白さを知ることは、黙して独り活字を読み続ければ、机に座り続ける習慣が身につく利点があります。その習慣は、そのまま受験勉強に長い時間集中できる基礎づくりに結びつくでしょう。

 

 

みすず学苑 半田晴久

2003年8月21日  産経新聞